第4章 知覚は問題解決過程

パネル4-1 ロックの主張

1. 知覚とは,思考を特徴づけているものと似たような操作に基礎を置く知的なものである

2. ただし,知覚の場合には,素材(感覚受容器において受容される刺激)の性質に拘束される

4.1 いくつかのデモンストレーション

パネル4-2 最終知覚に至るために潜時を必要とする知覚の例

1. 自己の誘導運動(induced movement of the self)

2. 実体鏡を覗いたときの両眼立体視

3. 白と黒の断片からなる切り絵・断片絵(fragmented figure)

パネル4-3 仮現運動は網膜上での刺激の時空間パターンに対して

神経生理学的に自動的に発動されるのではない

=最終知覚は自動的・機械的に生じるのではなく,事態をどのようなものと捉えるかの推論の上に決まる

パネル4-4 モルガンの公準

科学者は,もしある心理学的事実がより低次なメカニズムにより説明可能なら,より高次なメカニズムに説明を求めてはならない

4.2 知覚の段階説と計算理論の共通性

パネル4-5 ホムンクルス

1. 高次な認知機能を担当する“実行装置(executive agency)”:ホムンクルスを登場させると,そのホムンクルスの知的能力を説明するメカニズムがさらに必要になるという循環論に陥る

2. しかしロックは,それを承知の上で,あえてホムンクルスの導入を肯定的に受けとめた

パネル4-6 ロックはなぜ“実行装置(executive agency)”の

導入を適切と考えたのか?

1. 知覚の基盤となる記憶へのアクセス過程は,自動的選択というよりも“走査(scanning)”という知的処理に近い

2. 記述を導く刺激入力は,内観として意識できる

パネル4-7 ワーキング・メモリーにおける

“中央実行系(central executive)” (Baddeley, 1996)

1. “中央実行系”に関する研究が遅れたのは,この要素が高度な認知機能を背負っているため

2. 「ホムンクルスは敵か味方か?」→最初から完全な分析を求めるのでなく,まずホムンクルスを想定して漸進的アプローチをとるのが得策だ

4.3 解決の発見

パネル4-8 ロックの知覚過程の3相

1. “literal percept(文字どおりの知覚物)”:近刺激と密接に対応する知覚=2次元世界モード

2. 最終知覚(final percept)に向かって選好された解決(preferred solution):=3次元世界モード

3. 最終知覚(final percept):遠刺激と対応する

パネル4-9 “literal percept”から“preferred solution”に至る2つの道筋

1. “literal percept”の中に,すでに解決への手がかりが存在し,それを用いて“preferred solution”へと至る道筋=“下からの解決”

2. “literal percept”の中に,“preferred solution”のための手がかりが存在しない場合=“上からの解決”

パネル4-10 “下からの解決”と“上からの解決”の輻輳

1. 下からの解決:“anorthoscopic効果”を用いて説明

2. 上からの解決:“運動−奥行効果(kinetic depth effect, 略してKDE)”を用いて説明

4.4 発見された解決の受容

パネル4-11 図4-9の仮現運動事態での“下からの解決”では

3つの解決が可能

1. 図形は動きながら折れ曲がり方を変えてゆくという解決

2. 時計回りまたは反時計回りに回転しながら12時から6時の位置まで運動するという解決

3. 3次元的に手前または奥行方向へ180度回転するように動くという解決

パネル4-12 近刺激との斉合性

1. 図4-10aの事態では,3種類の運動のいずれも可能

2. 図4-10bの事態では,ベクトル分解することにより,2種類の運動が可能

4.5 解決の選好

パネル4-13 ある解決が選好される理由についてのいくつかの説明

1. ゲシュタルト心理学:最も単純(簡潔)な解決が選好される=最も経済的にコード化できるものが選好される=“簡潔性(プレグナンツ)の原理”

2. 経験主義的観点:過去において最も頻繁に誘導された刺激が選好される=過去経験説

3. 恒常性に基づく観点:対象物が位置や向きを変えても固体物として一定性を保つような知覚が選好される

4. “実行装置(executive agency)”に基づく観点:複数の事象における同時的変化を,偶然の一致ではなく,何か共通の原因によって引き起こされたものとして解決したがる=共通原因説

パネル4-14 ロックらのアノーソスコーピック視研究のねらい

1. スリット幅が狭ければ,観察者は,静止した窓の中を下から上へ垂直移動する黒い点を知覚し,後ろの紙に広がる曲線は知覚しない

2. スリット幅が十分に広ければ,背後の曲線のかなりの部分が同時に見えるため,背後の曲線が見えてくる

3. どこまで広げれば,曲線が見え始めるか?

4.6 問題解決過程での注意の役割:Inattentional Blindness

パネル4-15 見ているのに注意を向けていないと…

1. 注意を向けているものはそうでないものより詳細に見えるようになるだけ

それとも

2. 眼をあけて目の前の対象物が網膜上に映っているにもかかわらず,ほとんど何も知覚していないことがある

パネル4-16 クリティカル試行で検出が求められた刺激の属性

(いずれも中心窩から視角2度以内に提示)

●刺激要素の存在性,●位置,●色,●要素数,●動き,●ちらつき,○形

○をつけた“形”以外は,前注意的(preattentive)に処理できると考えられる属性

パネル4-17 IB(Inattentional Blindness)実験で得られた主な結果

1. おしなべて75%という検出率だったが,これは“完全注意条件”での値と変わらない→一見,拍子抜け

2. “統制条件”(十字刺激は呈示されない)での100%という検出率に比べ,25%もの被験者が,注視点から視角2度以内に200ミリ秒間も提示された刺激に対し,その存在にすら気づかなかった→IB(Inattentional Blindness)という考え方を押し進めるべき

パネル4-18 IB(Inattentional Blindness)を支持するもう一つの知見

=中心窩周辺よりも中心窩の方が,IBが起こりやすい

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