吉村浩一・川辺千恵美(共著)『逆さめがねが街をゆく上下逆さの不思議生活—』(1999, ナカニシヤ出版)

本の中ではモノクロの合成画ですが,それぞれの絵をクリックすると,総天然色で見ていただけます.


まえがき

 私は逆さめがねを職業にしています.妙な職業だなあ,と思われるかもしれませんが,大学には変わったことをしている人がちらほら残っております.

 さて,プロであるからには,逆さめがねを着けた生活の中で起こる不思議なことを学問的に説明してゆかなければなりません.そこで,難しい心理学理論の助けを借りて,あれやこれやと理屈を考えてきました.そして,『3つの逆さめがね[改訂版]—変換された視野への冒険—』(1997, ナカニシヤ出版)という,一般の人の目にはほとんどとまらない堅い本を著しました.

 しかし,逆さめがねを着けた人が体験する不思議現象は,さまざまな分野の空想豊かな人たちが関心をもつファンタジーの世界でもあります.そこで,学問的解説という理屈の世界から少し離れて,ファンタジーの展示会を催すことを考えました.そのような目で眺めてみると,興味引かれる不思議体験があちこちで見つかります.そんな体験の生の姿に,少し味つけして皆さんに紹介するのがこの本です.私自身も,きつい実験で味わったつらい思い出を,“不思議さを楽しむ”というスタンスで追体験しながら,この本を作りました.

 このたび,私の専門分野の知覚心理学とはずいぶん違ったところで,逆さめがねを自ら着けて生活し,その体験を修士論文にまとめた川辺千恵美さんと出会って,この本を企画するイマジネーションがわき起こりました.なんと,工学部意匠工学(工業デザイン)の修士論文を書くために,彼女は逆さめがね生活を行ったのです.その実験で得られた被験者からの興味深い報告に,彼女自身に絵を描いてもらいました.私の担当は,それらに解説を加えることと,全体の企画・構成を行うことでした.現実にあり得ない知覚印象を被験者は次々に報告するわけで,それをどう絵に表すかを二人でディスカッションしながら作ってゆく作業は,とても楽しい仕事でした.

 そして,完成した作品を,いみじくも上に紹介した堅い本と同じナカニシヤ出版から出版していただく運びとなりました.いつもながらわがままな出版形態を受け入れていただいたナカニシヤ出版編集部の宍倉由高さんに,この場を借りてお礼申し上げます.サイエンスとアートのユニークな出会いの姿として,皆さんにも楽しみなからイマジネーションを膨らませていただければと願っています.

1999年2月

吉村浩一



目 次

 はじめに 2

1 ひっくり返るのはヘヤではなくシヤなのです 6

2 異様な現象 8

3 ユーモラスな世界 22

4 だまされた! 34

5 笑えないどじっぽさ 44

6 気持ち悪い 54

7 これが本当に私の手? 58

8 幻想空間 64

9 少しスリルが:街中の遊園地 74

10 シャイな心,孤独な私 80

11 遊びの共感者 88

12 不思議なつながり:メビウスの街 94

13 変なからだ 98

14 ふたりの私 110

15 こんなことができます 118

16 おやっ,正立している! 126

17 元の世界へ無事帰還? 140

 元の世界の皆さんへ 146

 おわりに—被験者体験裏ばなし— 156

 トピックを見つけるための索引 161


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